4. Debian 12 (bookworm) からのアップグレード
4.1. アップグレードの準備
アップグレードの前には、trixie で注意すべき点 に書かれている情報も読むことをお勧めします。この章に書かれている問題点は、アップグレードの過程と直接は関係がないかもしれませんが、それでもアップグレードを開始する前に知っておくべき重要事項である可能性があります。
4.1.1. あらゆるデータや設定情報をバックアップする
システムをアップグレードする前に、完全なバックアップを取っておくよう強くお勧めします。少なくとも、失いたくないデータや設定情報だけでもバックアップしておきましょう。アップグレードのツールや処理はきわめて信頼性の高いものですが、アップグレードの最中にハードウェア障害が起こると、システムに大きなダメージを与えることがありえます。
バックアップしておくべき主な対象として、/etc
、/var/lib/dpkg
、/var/lib/apt/extended_states
の中身、そして dpkg コマンドの出力などがあります:
$ dpkg --get-selections '*' # (the quotes are important)
システムの管理に aptitude
を使っている場合は、/var/lib/aptitude/pkgstates
もバックアップしておくと良いでしょう。
アップグレードの過程自体は、/home
ディレクトリ以下は一切変更しません。とはいえ、(Mozilla スイートの一部や、GNOME・KDE といったデスクトップ環境のように) ユーザが初めて新しいバージョンのアプリケーションを起動するときに、既存のユーザ設定を新たなデフォルト値で上書きしてしまうものがあるのも事実です。万一に備えて、ユーザのホームディレクトリにある隠しファイルと隠しディレクトリ (いわゆる "ドットファイル") をバックアップしておくのがよいでしょう。古い状態に戻したり、再度設定する場合に役立つはずです。ユーザにもこのことについて知らせておいてください。
あらゆるパッケージのインストール処理はスーパーユーザ特権で実行されなければならないため、root
としてログインするか su
や sudo
を使って、必要なアクセス権限を得てください。
アップグレードにあたって事前に整えなければならない条件がいくつかあります。実際にアップグレードを実行する前にそれらを確認してください。
4.1.2. 事前にユーザに通知する
アップグレードの前には、その予定をすべてのユーザに知らせるとよいでしょう。ただ、システムに ssh
接続などでアクセスしてきているユーザが、アップグレードの最中にそうと気付くことはほとんどないはずで、また、作業を続行できるはずです。
万一の対策をしたければ、アップグレードの前に /home
パーティションをバックアップするか、アンマウントしておきましょう。
trixie にアップグレードするときはおそらくカーネルをアップグレードしなければならないので、通常は再起動が必要です。通常、これはアップグレード完了後に実施します。
4.1.3. サービスのダウン期間の準備
システムが提供しているサービスで、アップグレードに含まれるパッケージが関連するサービスがあるかもしれません。この場合、注意して欲しいのですが、アップグレード作業中に関連パッケージが置換・設定される際、これらのサービスが停止します。この間、サービスは利用できなくなります。
これらのサービスに対する実際のダウン期間は、システム中でアップグレードされるパッケージ数に応じて違いますし、このダウン期間には (もしあれば) システム管理者が各パッケージのアップグレードに対する設定の質問への回答に費やす時間も含まれます。アップグレード作業が放置されたままでいて、システムがアップグレード中に入力を必要とした場合、非常に長期間サービスが利用ができなくなる可能性が非常に高いでしょう [1]
アップグレードを行うシステムが、ユーザーやネットワークにとって最も重要なサービスを提供している場合 [2]、システムの最小アップグレード で記述しているように最小限のシステムアップグレードを行い、次にカーネルのアップグレードと再起動をし、そしてもっとも重要なサービスに関連するパッケージをアップグレードします。これらのパッケージのアップグレードは、システムのアップグレード にある完全アップグレードより先に実施します。このようにすれば、これらの最重要サービスが動作しつづけ、そして完全アップグレード作業を行っても利用可能であることを保証し、サービスの停止時間を減らすことができます。
4.1.4. 復旧の準備
Debian はシステムがブートできる状態を常に確保するように努めていますが、アップグレード後のシステム再起動で問題に遭遇する可能性は常にあります。既知の潜在的な問題点の多くは、このリリースノートの本章と次章で述べられています。
上述の理由により、システムが再起動に失敗したり、リモート管理されているシステムならネットワーク接続の確立に失敗した場合に備え、復旧できる手立てを整えておくことが大切です。
ssh
接続経由でリモートからアップグレードを行うのなら、リモートのシリアル端末からサーバにアクセスできるよう、必要な事前準備をしておくことをお勧めします。カーネルをアップグレードして再起動した後、ローカルコンソール経由でシステム設定を修正しなければならないことがあります。また、アップグレード中に誤ってシステムが再起動された場合にも、ローカルコンソールを使って復旧する必要に迫られることがあります。
緊急時のリカバリ作業について、通常お勧めしているのは trixie 用 Debian インストーラーの レスキューモード の利用です。インストーラーを使う利点は、多くのインストール手段の中からあなたの状況に最適なものを選べることにあります。より詳しい情報は、インストールガイド (https://www.eddiesalazar.gq/releases/trixie/installmanual にあります) の第 8 章にある"壊れたシステムの復旧"セクションや、Debian インストーラー FAQ を参照してください。
これが失敗するなら、システムを起動してアクセス・修復するための代替手段が必要となるでしょう。1 つのオプションとしては、特別な復旧イメージや live インストール イメージを使うことがあります。これらを使って起動した後は、ルートファイルシステムをマウントし、chroot
でその中に入って問題点を調査・解決できるはずです。
4.1.4.1. initrd を使った起動中のデバッグシェル
initramfs-tools パッケージは生成した initrd にデバッグシェルを収録します [3]。例えば、initrd がルートファイルシステムをマウントできなければ、デバッグシェル内に移るでしょう。このデバッグシェルは、問題の追跡、そしておそらくは修正の手助けとなる基本的なコマンドを備えています。
チェックすべき基本的事項としては、次のようなものがあります。/dev
内に適切なデバイスファイルが存在するか、どのモジュールがロードされているか (cat /proc/modules
)、dmesg
の出力にドライバのロード失敗のエラーが出ていないか、など。dmesg
の出力はまた、どのデバイスファイルがどのディスクに割り当てられているのかも示してくれます。ルートファイルシステムが期待通りのデバイス上にあるかを確認するために、echo $ROOT
の出力もチェックすべきでしょう。
問題点を何とか解決できたなら、exit
とタイプすることでデバッグシェルを終了させ、起動プロセスを失敗した時点から継続できます。もちろん次回の起動時に再び失敗することが無いよう、根本的な問題を修正して initrd を再生成する必要があるでしょう。
4.1.4.2. systemd を使った起動中のデバッグシェル
起動が systemd において失敗する場合、カーネルコマンドラインを変更することでデバッグ用の root シェルを追加できます。基本的な起動は成功するがサービスが起動に失敗する場合は、カーネルパラメーターに systemd.unit=rescue.target
を追加すると解決の役に立つかもしれません。
それ以外の場合、カーネルパラメーターとして systemd.unit=emergency.target
を指定することによって、可能な限り早い段階で root シェルが使えるようになります。ですが、これは root ファイルシステムを読み書き可能な権限でマウントする前に実行されます。以下を手動で実行する必要があるでしょう:
# mount -o remount,rw /
もう一つのアプローチは debug-shell.service
経由で systemd の "早い段階でのデバッグシェル" を有効にすることです。次の起動時にこのサービスは起動プロセスの初期段階で tty9 にて root のログインシェルを立ち上げます。カーネルの起動パラメーターで systemd.debug-shell=1
と指定して有効にするか、あるいは systemctl enable debug-shell
で設定を永続的にします (この場合、デバッグが完了した際には再度無効にできます)。
systemd 環境下で起動がおかしいのをデバッグする詳細な情報については、Freedesktop.org の Diagnosing Boot Problems という記事で参照できます。
4.1.5. アップグレード用の安全な環境の準備
重要
(tinc のような) VPN サービスを使っている場合、アップグレード作業中に使えなくなる可能性を考慮してください。サービスのダウン期間の準備 を参照してください。
リモートでのアップグレード時にさらなる安全マージンを得るため、screen
プログラムが提供する仮想コンソール内でアップグレード作業を行うことを提案します。このプログラムは安全な再接続を可能にし、リモート接続プロセスが一時的に切断された場合でもアップグレード作業が中断しないようにしてくれます。
micro-evtd パッケージにより提供される watchdog デーモンのユーザは、アップグレードの前にデーモンを止めて watchdog タイマーを無効化し、アップグレード作業の途中で誤ってリブートが起きないようにすべきです:
# service micro-evtd stop
# /usr/sbin/microapl -a system_set_watchdog off
4.2. "純粋"な Debian からの作業開始
この章で説明しているアップグレードのプロセスは、"純粋"な安定版の Debian システムを想定して書かれています。もし、APT の設定が bookworm 以外で追加のソースを指定している、あるいは他のリリースやサードパーティからパッケージをインストール している場合、確実にアップグレード作業を遂行するため、事態をややこしくするこれらの要因を取り除くことから始めると良いでしょう。
APT がどのソースからパッケージをダウンロードするべきかを判断するのに使っている主要設定ファイルは /etc/apt/sources.list
ですが、/etc/apt/sources.list.d/
ディレクトリ内のファイルを使用することもできます。詳細は sources.list(5) を参照してください。もしシステムで複数の source-list ファイルを使用しているのであれば、設定に一貫性があることを確認する必要があるでしょう。
4.2.1. Debian 12 (bookworm) からのアップグレード
12 (bookworm) からのアップグレードのみがサポートされています。Debian のバージョンを表示するには以下を実行します:
$ cat /etc/debian_version
Debian 12 へのアップグレードが必要な場合、まず https://www.eddiesalazar.gq/releases/bookworm/releasenotes にある Debian 12 のリリースノートの指示に従ってください。
4.2.2. 最新のポイントリリースへのアップグレード
またこの手順は、システムが bookworm の最新ポイントリリースにアップデート済みであるものと想定しています。そうではなかったり、アップグレード済みかどうか不明なら、bookworm システムのアップグレード 内の指示に従ってください。
4.2.3. Debian Backports
Debian Backports は Debian 安定版のユーザーがより最新に近いバージョンのパッケージを (テストとセキュリティサポートの不足のトレードオフ込みで) 実行できるようにしてくれます。Debian Backports チームは、次期 Debian リリースからのサブセットパッケージを現在の Debian 安定版リリースで使えるようにするために調整と再コンパイルなどしてメンテナンスしています。
bookworm-backports から取得したパッケージは trixie にあるバージョンよりも小さいバージョン番号なので、ディストリビューションのアップグレードの作業中、"純粋な" bookworm パッケージと同じやり方で trixie へと問題なくアップグレードできるはずです。今の所は潜在的な問題は特定されてないものの backports 経由のアップグレードはテストが少なく、それに応じてよりリスクがあります。
注意
通常の Debian Backports はサポートされているものの、(bookworm-backports-sloppy を参照している APT source-list の記述を使っている) sloppy backports からのクリーンなアップグレード経路は存在しません。
非公式なソース と同様に、ユーザーはアップグレードの前に APT source-list ファイル群から "bookworm-backports" の記述を削除することが推奨されています。アップグレードの完了後に、"trixie-backports" (https://backports.debian.org/Instructions/ をご覧ください) の追加が検討できるでしょう。
詳細については Backports Wiki ページ を調べてください。
4.2.4. パッケージデータベースの準備
パッケージデータベースの準備が整っているか、アップグレードする前に確認してください。もしパッケージマネージャ aptitude や synaptic を使っているなら、それらにおいて中断しているアクションがないか確認してください。パッケージマネージャにおいて、あるパッケージが削除あるいは更新の対象となっているなら、アップグレード手順に好ましくない影響を与える可能性があります。パッケージマネージャにおけるアクションの修正は、APT source-list ファイルに "stable" や "trixie" ではなく、"bookworm" が指定されている段階でのみ可能なことに注意してください。APT source-list ファイルのチェック も参照してください。
4.2.5. 利用されなくなったパッケージ
アップグレードする前に 古いパッケージをシステムから削除する のも良いでしょう。古いパッケージはアップグレードを難しくさせ、メンテナンスされていなければセキュリティリスクが存在しうるからです。
4.2.6. Debian 由来でないパッケージを削除する
Debian 由来でないパッケージを見つけるには、以下の apt
または apt-forktracer
を使った 2 つの手法があります。どちらも 100% 正確ではない点を留意して下さい (例: apt の例では、古いカーネルパッケージのように一度は Debian によって提供されていたが今は提供されていないパッケージを表示します)。
$ apt list '?narrow(?installed, ?not(?origin(Debian)))'
$ apt-forktracer | sort
4.2.7. 残っている設定ファイルを取り除く
以前のアップグレードでは使われていない設定ファイルのコピー、パッケージメンテナーによって提供された 古いバージョン の設定ファイルなどが残されているかもしれません。以前のアップグレードから取り残されたファイルを削除すると混乱を避けることができます。そのような取り残されたファイルを見つけるには:
# find /etc -name '*.dpkg-*' -o -name '*.ucf-*' -o -name '*.merge-error'
4.2.8. non-free コンポーネントと non-free-firmware コンポーネント
non-free なファームウェアをインストールしていた場合、APT sources-list へ non-free-firmware
の追加が推奨されています。
4.2.9. proposed-updates セクション
APT source-list ファイルに proposed-updates
セクションを含めている場合は、システムのアップグレードを試みる前に、それらのセクションをファイルから削除してください。これは衝突の可能性を減らすための予防策です。
4.2.10. 非公式なソース
システムに Debian 以外のパッケージがインストールされている場合、依存関係の衝突のためアップグレード中に削除されるかもしれないことに注意してください。当該パッケージが APT source-list ファイルに Debian 以外のパッケージアーカイブを追加することでインストールされたのなら、そのアーカイブが trixie 用にコンパイルされたパッケージも提供しているかをチェックし、Debian パッケージ用のソース項目と同時にそれも適切に修正してください。
ユーザによっては bookworm システムに 非公式に バックポートされた "より新しい" バージョンのパッケージが 存在している こともあるでしょう。そのようなパッケージはファイルが競合する可能性があるので、アップグレードの際にはおそらく問題を起こします [4]。アップグレード中の注意点 には、もしそのような競合が起きた場合にどうやって対処するのか、という情報があります。
4.2.11. APT の pin 機能を無効にする
特定のパッケージを安定版以外のディストリビューション (テスト版など) からインストールするように APT を設定している場合、そのパッケージが新しい安定版リリース内のバージョンにアップグレードできるように、(/etc/apt/preferences
および /etc/apt/preferences.d/
内に保存されている) APT の pin 設定を変更しなければならないかもしれません。APT の pin 機能に関する、より詳しい情報は、apt_preferences(5) にあります。
4.2.12. パッケージの状態をチェックする
アップグレードの方法に関係なく、まず全パッケージの状態を調べ、全パッケージがアップグレード可能な状態にあるのを確認することをお勧めします。次のコマンドは、インストールが未完了のパッケージ (Half-Installed) や設定に失敗したパッケージ (Failed-Config)、何らかのエラー状態にあるパッケージを表示します:
$ dpkg --audit
aptitude
や次のようなコマンドを使ってシステムの全パッケージの状態を検査することもできます。
$ dpkg -l
または
# dpkg --get-selections '*' > ~/curr-pkgs.txt
別の方法としては apt
を使うこともできます。
# apt list --installed > ~/curr-pkgs.txt
アップグレード前に、あらゆる hold 状態を解除しておいたほうがよいでしょう。アップグレードに不可欠なパッケージが hold 状態にある場合、アップグレードに失敗します。
$ apt-mark showhold
パッケージをローカルで変更・再コンパイルしており、パッケージの名前を変えたりバージョン番号に epoch フィールドを追加していないなら、アップグレードしないよう hold 状態にしておかなければなりません。
apt
でパッケージを "hold" 状態に変更するには、以下のように実行してください。
# apt-mark hold package_name
"hold" 状態を解除するには hold
の代わりに unhold
を使用してください。
修正が必要なことがあるなら、APT source-list ファイルのチェック で説明するように APT source-list ファイルが bookworm を指定したままにしておくべきです。
4.3. APT source-list ファイルの準備
アップグレードを始める前に、APT の source-list ファイル (/etc/apt/sources.list
および /etc/apt/sources.list.d/
以下のファイル) に trixie を追加し、bookworm を削除する必要があります。
APT は、あらゆる設定済みアーカイブを通して見つかったすべてのパッケージを見比べ、最も大きなバージョン番号のパッケージをインストールします。同じパッケージが取得可能な場合は、ファイルで最初に現れたエントリを優先します。したがって、複数のミラーを指定する場合は、最初にローカルのハードディスクを、次に CD-ROM を、最後にリモートミラーを指定すると良いでしょう。
リリースを指定するのに、コードネーム ("bookworm" や "trixie") と状態名 ("oldstable"、"stable"、"testing"、"unstable") のどちらもよく使用されます。コードネームによる指定には、新しいリリースが出たときに驚かずに済むという利点があるため、ここではコードネームを使用しています。当然ですが、コードネームを使用している場合は自分でリリースアナウンスに注意を払わなければいけません。代わりに状態名を使用している場合は、リリースが行われた直後に、パッケージが大量に更新可能になったことに気づくでしょう。
Debian は、Debian のリリースに関わる関連情報について最新の状態を保つために役立つ 2 つのアナウンス用メーリングリストを提供しています:
Debian アナウンスメーリングリストを購読 すれば、Debian が新しいリリースを行う度に通知がきます。例えば、"trixie" の "テスト版 (testing)" から "安定版 (stable)" へ変わった時などです。
Debian セキュリティアナウンスメーリングリストを購読 すれば、Debian がセキュリティのアナウンスを公開する度に通知を受け取ります。
4.3.1. APT のインターネットソースの追加
新規インストールではデフォルトはネットワークの条件によってあなたに近いサーバから自動的にパッケージをダウンロードできる Debian APT CDN サービスを使うように APT を設定します。これは比較的新しいサービスのため、古いインストールでは以前としてメインの Debian インターネットサーバのひとつまたはミラーのひとつを設定しているかもしれません。もしまだ設定を行っていない場合、APT 設定において CDN サービスを使うように切り替えることを推奨します。
CDN サービスを利用するには、あなたの APT ソース設定にこのような 1 行を追加してください (main
と contrib
を使用していると仮定します):
deb https://deb.debian.org/debian trixie main contrib
新しいソースを追加した後、"deb
" 行の先頭に、ハッシュ記号 (#
) を追加して無効にしてください。
しかしながら、もしあなたのネットワークの条件から近い特定のミラーを使用して良い結果が得たいならば、このオプションはまだ利用可能です。
Debian ミラーのアドレスは、https://www.eddiesalazar.gq/mirror/list にあります。
For example, suppose your closest Debian mirror is https://mirrors.kernel.org
. If you inspect
that mirror with a web browser, you will notice that the main
directories are organized like this:
https://mirrors.kernel.org/debian/dists/trixie/main/... https://mirrors.kernel.org/debian/dists/trixie/contrib/...
与えられたミラーを使うよう APT 設定をするには、このような 1 行を追加してください (再度、main
と contrib
を使用していると仮定します):
deb https://mirrors.kernel.org/debian trixie main contrib
"dists
" を書かなくても、暗黙のうちに追加します。リリース名の後の各引数は、パスの末尾につけて、複数のディレクトリに展開するのに用います。
再度、あなたの新しいソースを追加した後、既存のアーカイブエントリを無効にしてください。
4.3.2. APT のローカルミラーソースの追加
HTTP パッケージミラーを使うのではなく、ローカルディスク (おそらくは NFS マウントされたもの) にあるミラーを使うよう、APT source-list ファイルを変更したいことがあるかもしれません。
例えばパッケージのミラーが /var/local/debian/
にあり、主なディレクトリの配置が次のようになっているとします。
/var/local/debian/dists/trixie/main/... /var/local/debian/dists/trixie/contrib/...
これを apt で使うには、次の行を sources.list
ファイルに追加します。
deb file:/var/local/debian trixie main contrib
"dists
" を書かなくても、暗黙のうちに追加します。リリース名の後の各引数は、パスの末尾につけて、複数のディレクトリに展開するのに用います。
新しいソースを追加した後、APT source-list ファイル内の既存のアーカイブエントリの先頭にハッシュ記号 (#
) を追加して無効にしてください。
4.3.3. APT の光学メディアソースの追加
DVD (や CD、Blu-ray ディスク) だけ を使いたい場合は、すべての APT source-list ファイル内の既存エントリの先頭にハッシュ記号 (#
) を置き、それらを無効にしてください。
CD-ROM ドライブをマウントポイント /media/cdrom
にマウントできるようにしている行が /etc/fstab
にあるかどうかを確認してください。例えば /dev/sr0
が CD-ROM ドライブなら、/etc/fstab
には次のような行が必要です。
/dev/sr0 /media/cdrom auto noauto,ro 0 0
第 4 フィールドの noauto,ro
の単語の間には、スペースを入れてはいけません。
これが正しく機能しているか調べるには、CD を挿入して以下を実行してみてください。
# mount /media/cdrom # this will mount the CD to the mount point
# ls -alF /media/cdrom # this should show the CD's root directory
# umount /media/cdrom # this will unmount the CD
問題がなければ
# apt-cdrom add
を、Debian Binary CD-ROM それぞれに対して実行してください。各 CD に関するデータが APT のデータベースに追加されます。
4.4. パッケージのアップグレード
推奨する方法はパッケージ管理ツール apt
を使って前の Debian リリースからアップグレードすることです。
注釈
apt
は対話式な用途を目的としており、スクリプトの中で使うべきではありません。スクリプトの中では字句解析に適していて安定した出力をもつ apt-get
を使うべきです。
まず、必要なすべてのパーティション (特にルートパーティションと /usr
パーティション) を read-write モードでマウントするのを忘れずに行いましょう。それには以下のようなコマンドを使います。
# mount -o remount,rw /mountpoint
次に、(/etc/apt/sources.list
や /etc/apt/sources.list.d/
以下のファイル内の) APT ソースのエントリが "trixie" と "stable" のいずれか一方を指定していることを念入りにチェックしてください。bookworm を指し示すソースエントリが含まれてはいけません。
注釈
CD-ROM のソース行は "unstable" を指定していることがよくあります。これは混乱の元かもしれませんが、変更すべきでは ありません。
4.4.1. セッションの記録
ここで強くお勧めしたいのですが、/usr/bin/script
プログラムを使って、このアップグレードセッションの記録を取るようにしましょう。こうすれば、何らかの問題が生じたときに何が起こったかを記録しておくことができ、必要に応じてバグ報告に正確な情報を含めることができます。記録を開始するには次のように入力します。
# script -t 2>~/upgrade-trixie-step.time -a ~/upgrade-trixie-step.script
typescript を再度実行する必要がある場合 (例: システムを再起動する必要がある場合) は、どのアップグレード手順のログを取っているのかを示すため、別の 手順 番号を使ってください。typescript ファイルは /tmp
や /var/tmp
のような一時ディレクトリには置かないでください (これらのディレクトリ内のファイルはアップグレードや再起動の際に削除されることがありますから)。
また、typescript ファイルに記録することで、スクロールしてスクリーンから消えた情報をもう一度見ることができるようにもなります。システムのコンソールの前に居る場合は、(Alt+F2
を使って) 2 番の仮想コンソールに切り替えて、ログインしてから
# less -R ~root/upgrade-trixie.script
と実行すれば当該ファイルを見ることができます。
アップグレード完了後に script
を停止するには、プロンプトから exit
と入力してください。
apt
は /var/log/apt/history.log
に変更されたパッケージの状態を、/var/log/apt/term.log
に端末の出力を記録します。
script
に -t スイッチをつけておいた場合は、以下のように scriptreplay
プログラムでセッション全体をリプレイできます。
# scriptreplay ~/upgrade-trixie-step.time ~/upgrade-trixie-step.script
4.4.2. パッケージリストの更新
まず、新しいリリースで利用可能なパッケージの一覧を取得する必要があります。そのためには以下のコマンドを実行してください。
# apt update
注釈
apt-secure のユーザは aptitude
や apt-get
を使うと問題を見つけることができるかもしれません。apt-get の場合、apt-get update --allow-releaseinfo-change
を使うことができます。
4.4.3. アップグレードするのに十分な領域があることを確認する
システムアップグレードの前には、システムのアップグレード で説明するシステム全体のアップグレードを開始するときに、十分なハードディスク領域があるかどうかを確認してください。まず、ネットワーク経由で取得してインストールする必要があるパッケージは、すべて /var/cache/apt/archives
(およびダウンロード中には partial/
サブディレクトリ) に保存されます。したがって、システムにインストールされるパッケージをダウンロードして一時的に保存できるよう、/var/
を保持しているファイルシステムパーティションに十分な空き領域があることを確認しなければなりません。ダウンロード後にはおそらく、アップグレードされるパッケージ (これらには、より大きなバイナリやより多くのデータが含まれている可能性があります) と、アップグレードに伴って依存関係に引きずられて新たにインストールされるパッケージの両方のインストールのために、他のファイルシステムパーティションにさらに領域が必要になるでしょう。システムに十分な空き領域がない場合、アップグレードが不完全な状態で終わり、復旧が困難になる可能性があります。
apt
で、インストールに必要なディスク領域の詳細な情報が表示できます。アップグレードを実行する前に、次のように実行して必要な領域の推定値を見ることができます。
# apt -o APT::Get::Trivial-Only=true full-upgrade
[ ... ]
XXX upgraded, XXX newly installed, XXX to remove and XXX not upgraded.
Need to get xx.xMB of archives.
After this operation, AAAMB of additional disk space will be used.
注釈
アップグレード手順の初めにこのコマンドを実行すると、以降のセクションで説明するような理由でエラーが発生する可能性があります。その場合、このコマンドを実行してディスク領域の推定値を見る前に、まず システムの最小アップグレード で説明しているシステムの最小アップグレードを行う必要があります。
アップグレードをするのに十分な領域がない場合は、apt
が以下のような警告メッセージを出します。
E: You don't have enough free space in /var/cache/apt/archives/.
この場合、事前に領域を解放するのを忘れないようにしてください。以下のことを実行するとよいでしょう。
インストールのために、以前 (
/var/cache/apt/archives
に) ダウンロードしたパッケージを削除する。apt clean
を実行してパッケージキャッシュを一掃すると、以前ダウンロードしたパッケージファイルをすべて削除できます。忘れ去られたパッケージを削除する。さらに、bookworm で手作業でパッケージをインストールするのに
aptitude
やapt
を使っていたのなら、手作業でインストールされたパッケージの記録が取られています。依存関係のみによって引きずられてインストールされたパッケージに対して、依存元パッケージが削除されたためにもう不要となった場合に、余分だというマークをつけることができるでしょう。手作業でインストールしたパッケージには削除されるマークをつけません。自動的にインストールされたがもはや使われていないパッケージを削除するには、以下を実行してください:# apt autoremove
You can also use
debfoster
to find redundant packages. Do not blindly remove the packages this tool presents, especially if you are using aggressive non-default options that are prone to false positives. It is highly recommended that you manually review the packages suggested for removal (i.e. their contents, sizes, and descriptions) before you remove them.多くの容量を占めていて現在必要のないパッケージを削除する (アップグレード後にいつでもインストールし直せます)。popularity-contest をインストールしていれば、
popcon-largest-unused
を使うことにより、容量の多くを占めていて使うことのないパッケージの一覧が得られます。dpigs
(debian-goodies パッケージに収録) やwajig
(wajig size
を実行) により、ディスク容量を消費するだけのパッケージを検索することができます。こういった情報は aptitude を使って検索することもできます。aptitude
を full-terminal モードで起動し、表示 > フラットなパッケージ一覧を新規に作成
を実行し、l
を押して、~i
と入力します。S
を押して~installsize
と入力します。すると、作業しやすい一覧が得られます。翻訳や地域化用ファイルが不要なら、それらをシステムから削除する。localepurge パッケージをインストールして設定すれば、選んだ少数のロケールのみがシステムに残るようにすることが可能です。これによって、
/usr/share/locale
の消費するディスク領域を減らせるでしょう。/var/log/
の下にあるシステムログを、一時的に他のシステムに移動するか、永久に削除する。仮設の
/var/cache/apt/archives
を使用する。すなわち、別のファイルシステム (USB ストレージデバイス、一時的なハードディスク、既に使用されているファイルシステムなど) を仮設のキャッシュディレクトリとして拝借することができます。注釈
アップグレード中にネットワーク接続が途切れる可能性があるので、NFS マウントは使用しないでください。
以下は、
/media/usbkey
にマウントされた USB ドライブがある場合を例とします。今までに、インストールのためにダウンロードされたパッケージを削除します。
# apt clean
ディレクトリ
/var/cache/apt/archives
を、USB ドライブにコピーします。# cp -ax /var/cache/apt/archives /media/usbkey/
現在のキャッシュディレクトリに、仮のキャッシュディレクトリをマウントします。
# mount --bind /media/usbkey/archives /var/cache/apt/archives
アップグレード後に、元々の
/var/cache/apt/archives
ディレクトリを復活させます。# umount /var/cache/apt/archives
残っている
/media/usbkey/archives
を削除します。
仮設のキャッシュディレクトリは、システムにマウントされているファイルシステムであれば何にでも作成できます。
システムの最小アップグレードを行う (システムの最小アップグレード 参照)、あるいは完全アップグレードにしたがって、システムの部分的なアップグレードを行う。これによって、システムを部分的にアップグレードが可能になり、完全アップグレード前にパッケージキャッシュの削除ができます。
パッケージを安全に削除するための注意として、APT source-list ファイルのチェック で説明するように、APT source-list ファイルが bookworm を指し示すよう設定を戻しておくことが望ましいです。
4.4.4. 監視システムの停止
apt
があなたのコンピューターで動作しているサービスを一時的に停止する必要があるかもしれないため、アップグレードの最中に終了された他のサービスを再起動できるような監視用サービスを予め停止しておくのが良い考えでしょう。Debian では、monit がそのようなサービスの例です。
4.4.5. システムの最小アップグレード
完全アップグレード (以下に記述しています) を直接行った場合、残しておきたいパッケージが大量に削除されてしまうことが時折あります。そのため、まずはこれらの競合状態を打開するための最小アップグレードを行い、その上で システムのアップグレード にあるような完全なアップグレードを行う、という 2 段階のアップグレード過程を踏むことをお勧めします。
これをまず行うには、以下のコマンドを実行してください。
# apt upgrade --without-new-pkgs
このコマンドには、アップグレードしても他のパッケージをインストール・削除する必要がないパッケージだけをアップグレードする、という効果があります。
システムの容量が少なく、容量による制約のため完全アップグレードが実行できない場合にも、システムの最小アップグレードは有用です。
apt-listchanges パッケージがインストールされていれば、(デフォルト設定で) パッケージのダウンロード後にアップグレードされるパッケージについての重要な情報をページャで表示します。読み終わったら q
を押してページャを終了し、アップグレードを続けてください。
4.4.6. システムのアップグレード
これまでの手順を実行し終わったら、アップグレードの主要な部分を続ける準備ができています。以下のコマンドを実行してください。
# apt full-upgrade
これによってシステムの完全なアップグレードが行われ、すべてのパッケージの最新版がインストールされ、リリース間で発生しうるパッケージの依存関係の変化すべてが解決されます。必要に応じて、新しいパッケージ (通常は、新しいバージョンのライブラリや、名前の変わったパッケージ) がインストールされたり、衝突した古いパッケージが削除されたりもします。
CD/DVD/BD のセットからアップグレードする場合には、アップグレードの最中に、おそらく特定のディスクを入れるよう何回か指示されることになるでしょう。同じディスクを複数回入れなければならないかもしれません。これは、相互に依存しているパッケージが別々のディスクに分散しているためです。
現在インストールされているパッケージを新しいバージョンへとアップグレードする際に、他のパッケージのインストール状態を変更しなければならないような場合には、そのパッケージは現在のバージョンのままになります ("固定されている" と表示されます)。この状態は、aptitude
でこれらのパッケージをインストール対象として選択するか、または apt install パッケージ名
を実行してみると、解決できます。
4.5. アップグレード中の注意点
以下の章では、trixie へのアップグレードの最中に現れるかもしれない既知の問題を記述しています
4.5.1. 「即時設定は動作しません」で full-upgrade が失敗する
apt full-upgrade
の途中でパッケージをダウンロードした後に失敗となり、
E: Could not perform immediate configuration on 'package'. Please see man 5 apt.conf under APT::Immediate-Configure for details.
と表示することがあります。これが起きた場合は、代わりに apt full-upgrade -o APT::Immediate-Configure=0
を実行することでアップグレードを進められるはずです。
この問題の暫定的な別の対処の可能性として、bookworm と trixie の両方のソースを一時的に sources.list
に追加して apt update
を実行する方法があります。
4.5.2. 予期されるパッケージの削除
trixie へのアップグレード作業では、システム中のパッケージ削除を尋ねてくるかもしれません。実際のパッケージ一覧は、インストールしてあるパッケージの構成によって異なってくるでしょう。このリリースノートでは、どのような方法をとるべきかに関する一般的なアドバイスをします。しかし、確信がもてない場合は、それぞれの方法でアップグレードを先に進める前に、どのパッケージを削除するよう提案されているのか、きちんと調べることをお勧めします。trixie で時代遅れ (obsoleted) となったパッケージの詳細については、利用されなくなったパッケージ を参照してください。
4.5.3. 衝突 (Conflicts) あるいは事前依存 (Pre-Depends) のループ
場合によっては衝突や事前依存のループのために、APT の APT::Force-LoopBreak
オプションを有効にして、必須パッケージを一時的に削除しなければならないかもしれません。その場合 apt
はこのことを警告してアップグレードを中断します。apt
のコマンドラインにオプション -o APT::Force-LoopBreak=1
を指定すれば、この状態を回避できます。
システムの依存関係の構造があまりに問題だらけで、手動での介入が必要となることもあります。通常、手動での介入とは、apt
を用いるか、あるいは
# dpkg --remove package_name
で問題の原因となるパッケージを消す作業になります。または次の方法を用いてもよいかもしれません。
# apt -f install
# dpkg --configure --pending
極端な場合には、コマンドラインから次のように入力して、再インストールしなければならないかもしれません。
# dpkg --install /path/to/package_name.deb
4.5.4. ファイルの衝突
"純粋" な bookworm システムからのアップグレードでは、ファイルの衝突は起こらないはずですが、非公式のバックポートパッケージをインストールしているなら起こるかもしれません。ファイルの競合が起こると、次のようなエラーになります:
Unpacking <package-foo> (from <package-foo-file>) ...
dpkg: error processing <package-foo> (--install):
trying to overwrite `<some-file-name>',
which is also in package <package-bar>
dpkg-deb: subprocess paste killed by signal (Broken pipe)
Errors were encountered while processing:
<package-foo>
ファイルの衝突を解消するには、エラーメッセージの 最後の 行に表示されたパッケージを強制的に削除します:
# dpkg -r --force-depends package_name
問題が修正できたら、先程説明した apt
コマンドを再度入力すれば、アップグレードを再開できます。
4.5.5. 設定の変更
アップグレードの最中に、いくつかのパッケージの設定・再設定に関する質問が表示されます。/etc/init.d
ディレクトリと /etc/manpath.config
ファイルに関しては、パッケージメンテナのバージョンに置き換えるようにしてください。システムの整合性を保つためには "yes" と答えることが必要になります。古いバージョンも .dpkg-old
という拡張子をつけられて保存されていますので、戻すのはいつでもできます。
どうすればよいかわからなくなったら、そのパッケージやファイルの名前を書き留めておいて、その問題解決は後回しにしましょう。typescript ファイルを検索すれば、アップグレードの最中に画面に表示された情報をもう一度見ることもできます。
4.5.6. コンソール接続へセッションの変更
システムのローカルコンソールを使ってアップグレードを実行している場合、アップグレードの最中に何回かコンソールが別の画面へ移動してしまい、アップグレード作業が見えなくなることに気づくかもしれません。例えば、グラフィカルインターフェイスがあるシステムではディスプレイマネージャが再起動した際に起こります。
仮想ターミナル 1 に戻るには (グラフィカルの起動画面の場合は) Ctrl+Alt+F1
、あるいは (ローカルのテキストモードコンソールの場合には) Alt+F1
を使う必要があります。F1
は、アップグレードが実行されている仮想ターミナルの番号と同じ番号のファンクションキーと置き換えてください。異なったテキストモードのターミナル間で切り替えを行うには、Alt+左矢印
か Alt+右矢印
も使えます。
4.7. 次のリリースへの準備
アップグレードの後で、次のリリースに向けてできるいくつかの準備があります。
アップグレードするのに十分な領域があることを確認する や 利用されなくなったパッケージ で説明するように、余分、あるいは時代遅れ (obsolete) のパッケージを削除してください。それらのパッケージが使用する設定ファイルを確認し、パッケージの完全削除 (purge) によって、設定ファイルも含めて削除することを検討してください。削除したパッケージを完全削除する についても参照をお願いします。
4.7.1. 削除したパッケージを完全削除する
一般的に、削除したパッケージを完全に削除 (purge) するのは賢明なことです。以前のリリースアップグレード (つまりは bookworm へのアップグレード) の際に削除されているパッケージである、あるいはパッケージがサードパーティベンダーから提供されたものである場合、尚のこととなります。特に、古い init.d スクリプトは問題を起こすことが知られています。
注意
パッケージの完全削除 (purge) は通常ログファイルについても完全に削除を行うので、まずはこのバックアップを行ったほうが良いでしょう。
以下のコマンドは、設定ファイルをシステムに残して削除されたパッケージの一覧を (もしあれば) 表示します:
$ apt list '~c'
apt purge
を実行すればパッケージを削除できます。一度でこれらのパッケージを削除したい場合は、以下のコマンドで実施できます:
# apt purge '~c'
4.8. 利用されなくなったパッケージ
trixie では大量の新規パッケージが導入された一方で、bookworm に存在していた非常の少量の古いパッケージの破棄や削除が行われています。これら時代遅れのパッケージをアップグレードする手段は提供されていません。時代遅れのパッケージを使い続けても構いませんが、Debian プロジェクトでは通常、trixie がリリースされてから 1 年後にセキュリティサポートを終了します [5]。そして、その時点から他のサポートも提供しません。利用可能な代替手段で置き換えられるのであれば、そうすることをお勧めします。
パッケージがディストリビューションから削除された理由は、数多くあります――もう上流で保守されていない、そのパッケージの保守作業に興味を抱く Debian 開発者がもういない、提供していた機能が別のソフトウェア (または新しいバージョン) に取って代わられた、バグのために trixie にはもう適さないと見なされた、などです。最後の場合では、当該パッケージが "不安定版" ディストリビューション内にはまだ存在していることがあります。
"廃止、あるいはローカルで作成されたパッケージ" は以下のコマンドラインでまとめて表示・削除できます:
$ apt list '~o'
# apt purge '~o'
Debian バグ追跡システム は、パッケージが削除された理由についての追加情報を提供してくれることがよくあります。そのパッケージ自体と ftp.debian.org 擬似パッケージ の両方の、アーカイブ化されたバグ報告を調べてください。
trixie での廃止パッケージ一覧については、特記すべき廃止されたパッケージたち を参照して下さい。
4.8.1. 移行用ダミーパッケージ
bookworm からのいくつかのパッケージは trixie においてアップグレードを簡単にできるよう設計された空の代用品である移行用ダミーパッケージによって置き換えられるかもしれません。以前は 1 つのパッケージであったアプリケーションがいくつかのパッケージに分割された場合、移行用パッケージは古いパッケージと同じ名前で、新しいパッケージをインストールするための適切な依存関係をもって提供されるかもしれません。これをインストールした後は冗長なダミーパッケージを安全に削除できます。
The package descriptions for transitional dummy packages usually indicate their purpose. However, they are not uniform; in particular, some "dummy" packages are designed to be kept installed, in order to pull in a full software suite, or track the current latest version of some program.